クリキンディとおうちおやこドロップス

おうちで過ごす親子に向けた子育てブログ

おばあちゃんの鉢植え(物語風)

おうちおやこドロップスのクリキンディです。

 

今日は、おばあちゃん子だった私が後悔していることを聞いてください。

 

物語のように書いたので少し長くなっています。

 

時間のある方はお付き合いください。

 

 

 

私がまだ病気になる前の元気だった頃のこと。

 

高校1年生の春におばあちゃんがガンで入院しました。

 

数件隣りにあるおばあちゃんの家に、

小学生の時はよく行っていました。

 

母親が作った夕飯のおすそ分けを持っていけば、

「わざわざ持ってきてくれてありがとねぇ。」

と器にお菓子を入れて返してくれ、

 

遊ぶ友達がいない時に、

ぶらりと家を訪ねれば、

「学校頑張ってるねぇ、えらいねぇ。」

と何でもほめてくれるおばあちゃんが大好きでした。

 

学校で習ったことを言えば、

「頭良くなったねぇ。」

と撫でてくれ、

 

近所のおばさんに挨拶したことを

そのおばさんから聞いた時は、

「良い子に育ったねぇ。」

と何度も何度も言ってくれました。

 

家に行くと、

おばあちゃんはいつも

料理をしているか、

縫い物(編み物)をしていました。

 

その手を止めることなく

私の話をうんうんと聞いてうなずくおばあちゃん。

 

今、自分が台所に立って

料理するようになり、

野菜を茹でていると

その湯気と匂いに

あの頃のおばあちゃんとの毎日が蘇ります。

 

どこかに引っかけて穴のあいた割烹着を縫って、

ほつれた洋服の裾を縫い合わせて、

自分の冬物のチョッキを編んだり、

タツカバーを編んだり、

とても器用で働き者のおばあちゃんでした。

 

私が中学生、高校生になるにつれて

おばあちゃんの家に行く回数はだんだんと

減っていきました。

 

久しぶりに夕飯のおすそ分けを持って行くと、

曲がった腰を一生懸命反らして、

急ぎ足であちこちからお菓子や飲み物を持ってきて

もてなしてくれました。

 

少し大きくなった私は、

おばあちゃんに特別伝えることもなく、

おばあちゃんの話を聞くことの方が多くなりました。

 

この近辺は昔は田んぼばかりだった、とか

おばあちゃんが女学生の時に初めて靴を履いた、とか

何度も聞いたおばあちゃんの昔話を

あたかも初めて聞いたように

「へえ、そうなんだあ。」

と何となく返答をしながら聞いていました。

 

高校生活が始まってしばらくして、

母からおばあちゃんにガンが見つかって

入院すると話がありました。

 

病室のベッドに横になっているおばあちゃんは、

いつもみているおばあちゃんのまま。

 

ガンは進行しているけれど、

年をとっているので手術はできないとのこと。

 

本人はそれを知っているのかどうか

わかりませんでしたが、

お見舞いに行ったある日、

とても申し訳なさそうに私に話してきました。

 

「お願いがある。」と。

 

何かと思えば、

 

「家の庭にある鉢植えの花たちに水やりをしてほしい。」

 

ということでした。

 

そろそろ夏が近づいている。

自分がいつまで入院なのかわからないから

私に枯らさないようにお願いしたいと。

 

「心配しなくて良いよ。私がするから。」

 

と軽く請け負ってしまいました。

 

そんなの簡単簡単とたかを括って、

学校の帰りでも、一度帰ってからでもささっと

いけば良いやと思っていました。

 

さっそくその日と次の日水やりに行きました。

 

おばあちゃんが入院してから数日経っていたため

すでに枯れかけた花びらがありました。

 

しかし庭いっぱいに咲いた色とりどりの花たちは、

いつも優しくお世話をしてくれていた

おばあちゃんが帰ってくるのを待っているかのように

力一杯咲いていました。

 

「これなら、明日は水やりしなくて大丈夫だな。」

 

花の生命力に甘えてしまいました。

 

「今日は、雨が降るから水やりなし。」

「今日は、学校終わるの遅かったから水やりは明日。」

 

と言い訳をつくってサボりました。

 

数日後、おばあちゃんのお見舞いに行った時に

 

「水やりしてくれてありがとねえ。」

 

とお礼を言われて、

慌てておばあちゃんの家に行ってみると、、、

 

ほとんどの花が茶色くなり、

おばあちゃんの庭とは言えないほど、

汚い色に変わってしまっていました。

 

おばあちゃんが毎日毎日

手入れしてキレイにしていた花たち。

 

私が水やりをサボったばかりに

花たちは生きる気力を無くしてしまったようです。

 

私は、しおれた花たちから恨まれているような

気がしました。

 

おばあちゃんの宝の一つを台無しにした罪。

 

それから数回茶色の花たちに

水やりしましたが、

花たちが一度閉ざした心を

開いてくれるわけはなく、

生き返りませんでした。

 

おばあちゃんはだんだん喋れなくなり、

寝ていることが多くなりました。

 

私は花のことを言えずにいます。

 

そしておばあちゃんは亡くなりました。

 

おばあちゃんの花たちも無くなりました。

 

約束したのに。

おばあちゃんが大事にしていたのに。

 

花を育てるのは、水やりだけではダメだと

後になって知りました。

 

肥料も定期的にやらなければだし、

虫がつかないように

葉っぱや茎を調べなければいけません。

 

水やりを続けていたとしても

花たちはこんな怠け者の私を

受け入れてはくれなかったでしょう。

 

いまだに

花や野菜を育てるのが下手な私。

 

おばあちゃんのようには、

丁寧に毎日を過ごせていない私。

 

いつの日かおばあちゃんのように

花に愛される人になりたいです。

 

それでは、今日もひとしずく。。。